奇術研究1～86号コンプリートセット＋増刊号 ＋分類総目録(1～20号分)

日本奇術の歴史書です。マジック愛好家や研究家の方はぜひお手元にどうぞ。
『奇術研究』は、力書房が1956年から24年間に渡って出していた奇術の専門誌です。これは東京堂出版の復刻版ではなく力書房のオリジナル版です。
季刊で、ほぼ年４回発行されていました。創刊号から最後になった86号まで、毎回40ページ～50ページの分量がありました。

こちらのセットは全巻（創刊号～86号）揃っており、当時力書房から出された専用バインダーにすべて閉じられています。
バインダーは7冊で85号と86号はバインダーに入れていない状態の物です。
さらに、増刊号(海外奇術傑作選)1冊と分類総目録(1～20号用)1冊も付属した完全コンプリートな貴重なセットとなります。
この完全コンプリートをお持ちの方は日本でもわずかの方だと聞いております。

高木重朗氏が執筆者の中心となり、第１号から毎回海外の最新マジックを紹介してくださっていました。今とちがい、海外の情報など簡単には手に入らなかった時代でありながら、日本で奇術をしてる人がヴァーノン、スライディーニ 、マーロなど、世界の大御所のマジックに触れることができたのは、ひとえに高木氏のおかげです。

奇術研究８６号毎回特集があり、カードやコインのようなクロースアップマジックから、ロープ、ミリオンカード、シルク、そして鳩出しのようなステージマジックまで、わかりやすく解説されていました。
マジック愛好家にとって毎号楽しみな必需雑誌となっておりました。

高木重朗氏は知識の豊富さと同時に、解説者としても天性のセンスのよさをおもちでした。それまで日本で販売されていた奇術の本や、道具と一緒についてくる解説書は、マジックをやったことのない人が読んでも、まずできるような代物ではなかったのです。
解説されているのは原理だけであり、それだけでは肝心の部分がわからなかったのです。たとえば一枚のコインを消すとしましょう。解説書には「右手に持っているコインを左手に握ったように見せてから、左手を開けるとコインが消えています」といった調子で書いてあるだけです。
どうやって右手のコインを左手に握ったように見せるのか、その一番肝心の部分は何も解説されていないのです。
ところが高木氏の解説では、どうやって左手に握ったように見せるのか、その部分まできちんと解説されていました。
このようなことは今では当たり前のことと思うかも知れませんが、当時は画期的なことであったのです。
これは高木氏が海外のすぐれた奇術書を読んでおられたので、それから学ばれたものと思います。

初心者の人にとってどこが難しいのか、どこが理解できないのかわかった上で、その部分をわかりやすく解説できるのは解説者のセンスに負うところが大きいのですが、この高木氏の解説のスタイルは日本でも急速に定着し、解説書のスタンダードになりました。

当時、マジックをやっている人は毎号、この雑誌が出るのを首を長くして待ち焦がれたものです。少し大きな書店であれば、店頭にも並んでいましたので、そろそろ出る頃だと思うと毎日のように書店に行っては棚を覗いていました。
次の号が出るまでには3ヶ月間ほどありますので、その間、何度も読み返し、練習する時間もありました。
実際、1950年代、60年代に『奇術研究』を読んでいた人は、隅から隅まで繰り返し、読んでいました。マジックの話をしているとき、「そのマジックなら『奇術研究』の何号、何ページに載っている」といった会話が、マニアの間ではごく普通にかわされていたものです。
これだけ何度も読み込み、ひとつのマジックに3ヶ月ほどかけられるのですから、これはある意味幸せなことであったのかも知れません。（マジェイア氏談）

現在もマジシャンが読んでも今のマジックにつながる原点やそのまま同じことをやっているトリックなどもあり、目からうろこのような感想を持ってしまいます。
それだけ充実した内容の書物ではないかと思います。まさに奇術研究と言う名にふさわしい書物です。

写真のように数十年の時が経っていますので経年劣化している部分もあります。
冊子自体は毎号きれいにバインダーに閉じられていますが、若干色あせ等もあります。
経年劣化をご了承の上ご購入ください。

世に出回らない完全コンプリートセットを手にできるのは今回の1セットのみです。